社長の経済学:日本経済の現在地と未来〜人口減少社会での不動産投資を考える〜

、日本の現在と未来を語る上で避けては通れないテーマ、**「人口減少社会における不動産投資」**について深掘りしていきたいと思います。
1.過去の栄光と現在の課題:日本経済の変遷を振り返る
まずは、日本の経済がどのように発展し、そして現在どのような課題に直面しているのか、歴史を振り返りながら見ていきましょう。
戦後の日本は、焼け野原から奇跡的な復興を遂げ、高度経済成長期を経て世界第2位の経済大国にまで上り詰めました。この時期は、まさに「人口ボーナス期」。若年労働力が豊富で、生産性が飛躍的に向上し、内需も旺盛でした。私も子供の頃は、テレビで「ジャパン・アズ・ナンバーワン」なんて言葉を耳にして、日本は世界一の国なんだと思っていました。
しかし、バブル崩壊以降、日本経済は「失われた30年」と揶揄される長期停滞期に突入します。その根底には、経済構造の変化に加え、人口減少という大きな波が押し寄せていることがあります。2008年をピークに日本の総人口は減少に転じ、生産年齢人口(15歳以上65歳未満の人口)も減少の一途を辿っています。
この人口減少は、単に「人が減る」というだけでなく、経済に多岐にわたる影響を与えます。労働力不足、内需の縮小、社会保障費の増大、そして不動産市場への影響…これらはすべて連鎖しています。特に、労働力不足は深刻で、中小企業の経営者にとっては頭の痛い問題です。
2.人口減少社会における不動産市場の二極化
では、この人口減少が不動産市場にどのような影響を与えているのでしょうか? 結論から申し上げると、**「二極化」**がますます進展すると考えています。
① 価値が維持・向上する不動産
人口減少社会においても、需要が集中し、価値が維持・向上する不動産は存在します。それは、主に以下のような特徴を持つ物件です。
- 都心部、駅近、利便性の高いエリアの物件:人口は減少しても、人々は利便性を求めて都市部に集まります。特に、主要都市の中心部やターミナル駅からアクセスしやすいエリアは、依然として高い需要を維持するでしょう。私自身、出張で地方に行くことも多いのですが、やはり都心の駅近物件の便利さにはかないません。
- 新築・築浅、あるいはリノベーション済みの質の高い物件:少子高齢化が進む中、住宅の質の高さへの要求は高まります。省エネ性能、耐震性、セキュリティ、デザイン性など、質の高い物件は選ばれ続ける傾向にあります。
② 価値が下落するリスクの高い不動産
一方で、価値が下落するリスクが高いのは、以下のような物件です。
- 地方の過疎地域、駅から遠い、利便性の低いエリアの物件:人口減少の影響を最も大きく受けるのがこれらの地域です。空き家が増加し、維持管理コストがかかるため、売却が困難になるケースも増えるでしょう。
- 築古で大規模修繕が必要な物件:修繕費用がかさむ築古物件は、敬遠されがちです。特に、大規模修繕計画が不明確な物件は注意が必要です。
- 需要がないエリアの商業施設・オフィスビル:地域経済が縮小すれば、商業施設やオフィスビルの需要も減少します。テナント誘致が難しくなり、空室率が増加するリスクがあります。
3.不動産投資の新たな視点と戦略
このような人口減少社会において、オーナー様はどのように不動産投資を考えていくべきでしょうか? 私は以下の3つの視点が重要だと考えています。
① リスク分散とポートフォリオの最適化
もはや「地方の物件なら何でもOK」という時代ではありません。都心部や駅近の優良物件への投資を軸としつつ、一部で特定のニーズに特化した物件をポートフォリオに加えるなど、リスク分散を意識することが重要です。不動産投資もポートフォリオ理論を応用する視点が大切です。
② 賃貸管理の質の向上と入居者満足度の追求
空室リスクが高まる中で、入居者満足度の向上は喫緊の課題です。単に物件を提供するだけでなく、きめ細やかな管理、迅速なトラブル対応、住みやすい環境づくりなど、付加価値を提供することが求められます。弊社も、入居者様からのフィードバックを真摯に受け止め、より良いサービスを提供できるよう日々改善に努めています。
③ 新たな価値創造への挑戦
人口減少は、決してネガティブな側面ばかりではありません。例えば、**「空き家再生」や「リノベーションによる付加価値創造」**といった新たな活用法も生まれています。古民家を再生して外国人観光客向けの宿泊施設にする、あるいはシェアハウスとして活用するなど、アイデア次第で新たな価値を生み出すことができます。
4.未来を見据えた準備:今、何をすべきか
我々業界人も、オーナーの皆様にも、以下の点は必須となってきます。
- 情報収集と学習を怠らない:経済、不動産、金融の動向は常に変化しています。私も日々、経済ニュースや専門書を読み漁り、知識のアップデートを欠かしません。宅建士、ファイナンシャルプランナー、相続診断士の資格も、そのための努力の証です。
- 専門家との連携を密にする:不動産会社、税理士、弁護士など、各分野の専門家と連携し、常に最新の情報を共有し、適切なアドバイスを受けることが重要です。
- 長期的な視点を持つ:短期的な利益に囚われず、10年、20年先の未来を見据えた不動産投資戦略を立てることが成功の鍵となります。
人口減少社会において、不動産投資はこれまで以上に戦略的な思考と、変化に対応できる柔軟性が求められます。しかし、だからこそ、対策を考え行動することで、生き残る道はあると思っています。

