日本の金利について —— 最近の長期金利上昇が語るもの

今、何が起きているのか
私たち不動産業界にとって、金利の動きは血圧のようなもの。少しの変化でも体調全体に影響が出るように、金利の上昇は不動産市場全体に大きな影響を及ぼします。今日は、この「金利上昇」という現象について、私なりの視点で解説したいと思います。
私たちが語る「金利」とは何か
まず基本的なことから。私たちが日常会話で「金利が上がった」と言う時、これは一般的に10年物国債の利回り、つまり「長期国債の金利」のことを指しています。
イールドカーブ・コントロール(YCC)という異例の政策
2016年から、日銀は「イールドカーブ・コントロール(YCC)」という異例の政策を実施していました。これは、通常は市場が決めるはずの長期金利までも日銀がコントロールしようという、世界でも類を見ない大胆な政策でした(日本以外では過去にアメリカやオーストラリアが行ったことがあるようです)。
具体的には、10年物国債の金利が上がらないように、いわば強制的に日銀が大量の国債を買い続けたのです。金利を無理やり低く保つことで、世に出回る金の量を増やし、経済を刺激しようという狙いでした。
しかし、この政策には副作用もありました。市場参加者は「どうせ日銀が買ってくれる」という安心感から、本来の価格発見機能が麻痺してしまったのです。
そして2024年、ついに日銀はこのYCCを事実上解除し、長期金利の形成を市場に委ねる方向へと舵を切りました。
国債と金利の「シーソー関係」
ここで、多くの方が頭を悩ませる「国債が売られると金利が上がる」という不思議な関係について説明しましょう。
実は、国債の価格と金利は完全に逆の動きをする「シーソー関係」にあります。例えば、金利2%の国債を100万円で購入すれば、年間2万円の利息を受け取れます。しかし、市場金利水準が3%に上がったらどうでしょうか。
既存の2%の国債は魅力が減り、売り圧力となります。売るということはそれを買う人がいるということですが、買う人もわざわざ既存の金利2%の国債を買うより世の中で出回っている3%に近い利回りの国債を欲しがりますから、「では、その2%の国債を99万円なら買ってもいいよ」となり、債券価格が下落するということです。
財政懸念という新たな要因
さて、現在の金利上昇の背景には、日銀の政策転換だけでなく、もう一つ大きな要因があります。それが「財政懸念」です。
今回の衆議院選挙の公約で高市首相の消費税減税政策が発表されると、投資家たちは「そんな余裕はないはずだ→財政が悪くなる!」と判断し、国債が大量に売られました。
私は最初、国民受けする減税政策が発表されれば「経済も活性化して、株価も上がるだろう」と楽観的に考えていました。しかし、市場プロの反応は全く逆でした。
市場が示した「シビアな現実」
政治の世界では国民受けする政策が歓迎されますが、金融市場は極めてシビアです。「財源の裏付けは?」「持続可能性は?」と、容赦なく問いかけてきます。
この動きは、数年前の英国「トラス・ショック」を思い起こさせます(詳しい人はみなさんご存じかと思いますが)。当時、就任したばかりのトラス首相が大規模減税を発表したところ、市場が反発して国債が暴落、ポンドが急落し、わずか50日で政権が崩壊したあの事件です。
財政規律を軽視した政策は、いかに政治的に人気があっても、市場から厳しい審判を受ける——これが現代経済の冷酷な現実なのです。
不動産市場への影響
では、この金利上昇は私たちの不動産業界にどう影響するのでしょうか。
住宅ローンの固定金利は、長期金利に連動して決まります。変動金利も、日銀の政策次第で上昇する可能性があります。金利が上昇すれば、家計も苦しくなるでしょう。
しかし、悲観ばかりする必要はありません。メリット・デメリットはありますが、「金利のある世界」そのものは本来は正常です。むしろ、これまで金利がほとんど存在しなかった日本の状況こそが例外的だったと言えるでしょう。日本はようやく「金利のある正常な世界」に戻りつつあるのです。長すぎた異常な低金利時代が、少しずつ終わりを告げているだけとも言えます。
アドバイス
変動金利でローンを組んでいる方は、固定金利への借り換えを検討する時期かもしれません。
政治家がいかに美辞麗句を並べても、実際の市場プロの反応は冷ややかでした。つまり我々国民も消費税減税政策で喜ぶだけではなくその裏にある経済リテラシーの理解が求められています。
教科書には「景気が良くなれば金利を上げ、悪くなれば金利を下げる」と単純に書かれていますが実際はそんな単純なことではありません。現実の金利は、物価、為替、雇用、財政、国際情勢など、さまざまな要因が複雑に絡み合って決まります。
またインフレが進めば円の価値は相対的に低下します。この1年で3%弱のインフレになりました。私たちにできることは、常に最新の情報を冷静に分析し、判断をすることです。知識と判断力がこれまで以上に重要になるのだと思います。


